脂質にも品質があるということがわかりましたが、栄養素はできることなら食物から摂りたいものですね。
じゃあ何の肉を食べるとバランス良く必須脂肪酸を含む脂質が摂れるのかということで、肉の種類ごとに摂れる脂肪酸を調べることにしました。
元にしたデータは、文部科学省の日本食品標準成分表2015年版です。
私が到達した結論は、どれを選んでも大差なし。えーっ!?ってな話ですが、なぜそう思ったかをご紹介します。
牛・豚・鶏ならどれが良いか
普段食べる肉は、入手のしやすさや価格から牛肉・豚肉・鶏肉のどれかになると思います。必須脂肪酸の観点からいくとどの肉が良さげなのか比較してみることにします。
以下の表は、各食品の100gあたりの脂肪酸量(g)を記載したものです。
品目 | 飽和脂肪酸 | 一価不飽和 脂肪酸 |
多価不飽和 脂肪酸 |
オメガ3 | オメガ6 |
和牛 サーロイン | 9.2 | 13.3 | 0.6 | 0.0 | 0.6 |
輸入牛 サーロイン | 1.7 | 1.9 | 0.1 | 0.1 | 0.1 |
豚 バラ | 6.7 | 7.0 | 1.6 | 0.1 | 1.5 |
鶏もも肉 | 2.7 | 4.4 | 1.3 | 0.1 | 1.3 |
絶対的に不足しているオメガ3は1g/日は摂りたい(厚生省の摂取基準より)ところですが、これを見ると肉から必要分を摂ることは非常に難しいですね。オメガ3の中でも非常に重要とされるEPA/DHAは、ほぼ0です。
他の動物の肉ではどうか
牛・豚・鶏は、高度に畜産技術が進んだ動物(家畜)です。和牛よりも、より自然の姿に近い牧草飼育の輸入牛の方が好ましい脂肪酸比率になっていることからすると、他の動物の方が比率的に優れているのではないかと期待してしまいます。
で、同様に調べてみました。
品目 | 飽和脂肪酸 | 一価不飽和 脂肪酸 |
多価不飽和 脂肪酸 |
オメガ3 | オメガ6 |
馬肉 | 0.5 | 0.6 | 0.2 | 0.1 | 0.1 |
にほんじか | 2.0 | 1.8 | 0.3 | 0.1 | 0.2 |
あかしか (米国原種) |
0.3 | 0.2 | 0.2 | 0.1 | 0.1 |
まがも | 0.5. | 0.6 | 0.4 | 0.0 | 0.3 |
あいがも | 8.0 | 13.3 | 5.7 | 0.3 | 5.3 |
くじら | 0.1 | 0.1 | 0.1 | 0.0 | 0.0 |
いなご 佃煮 | 0.1 | 0.1 | 0.3 | 0.2 | 0.1 |
うーん。。。大差ない。。
多少あいがもがマシかという程度です。これらの肉を100gも食べるってお金の面でも、入手の面でもなかなか大変です。ましてや家族で食べるのは困難。
でも、優れているのでは?という仮定はある程度正しかったですよ。
以下の表は脂肪酸100gを集めた場合に、どれだけ各脂肪酸が入っているかを記載しています。左端の「脂肪酸総量」だけは特殊で、同じ量を食べたとしたらどれだけ脂肪酸があるかを示します。
品目 | 脂肪酸 総量 (g/100g) |
飽和脂肪酸 | 一価不飽和 脂肪酸 |
多価不飽和 脂肪酸 |
オメガ3 | オメガ6 |
和牛 サーロイン | 23.1 | 39.7 | 57.7 | 2.7 | 0.1 | 2.6 |
輸入牛 サーロイン | 3.7 | 3.65 | 51 | 3.7 | 1.4 | 2.3 |
馬肉 | 1.3 | 38.3 | 47.6 | 13.8 | 4.4 | 9.4 |
にほんじか | 4.2 | 30.7 | 43.9 | 25.4 | 18.1 | 6.9 |
あかしか (米国原種) |
0.7 | 48.7 | 29.3 | 21.9 | 9.8 | 11.8 |
まがも | 1.4 | 33.2 | 40.6 | 26.1 | 1.4 | 24.7 |
あいがも | 27 | 29.7 | 49.3 | 21 | 1.2 | 19.8 |
くじら | 0.3 | 30.7 | 43.9 | 25.4 | 18.1 | 6.9 |
いなご 佃煮 | 0.6 | 20.3 | 21.7 | 58 | 43.9 | 14.1 |
オメガ3の含有比率を見ると、「くじら」や「にほんじか」は優秀な値を示しています。いなごなんか鬼ですw
ただいかんせん和牛に比べて脂肪の絶対量が少ない。ましてや前述の通り100g集めてくるのが大変。いなごなんて100g分も食べるなんてちょっと気絶しそうです。。
全体的に見て和牛に比べると自然に育った動物はオメガ3の比率は高い。けど、自然で育ったゆえに脂肪が多すぎず健康体だってことです。和牛どんだけ肥満体なんだよ、って話。
どの部位を食べれはいいの?
「いなごをたくさん食べよう」はちょっととんでもない結論なので。視点を変えて、部位ごとの総量を見てみます。
品目 | 飽和脂肪酸 | 一価不飽和 脂肪酸 |
多価不飽和 脂肪酸 |
オメガ3 | オメガ6 |
和牛 サーロイン | 9.2 | 13.3 | 0.6 | 0.0 | 0.6 |
輸入牛 サーロイン | 1.7 | 1.9 | 0.1 | 0.1 | 0.1 |
牛レバー | 0.9 | 0.5 | 0.6 | 0.1 | 0.6 |
豚 バラ | 6.7 | 7.0 | 1.6 | 0.1 | 1.5 |
豚レバー | 0.8 | 0.2 | 0.7 | 0.1 | 0.6 |
鶏もも肉 | 2.7 | 4.4 | 1.3 | 0.1 | 1.3 |
鶏レバー | 0.7 | 0.4 | 0.6 | 0.2 | 0.4 |
レバーを食べればいいって結論かと思いきや、
どこも大差ないじゃんっていう…。
これも実は含有比率では豚と鶏レバーは優れているんです。しかし、脂肪の比率が少ない。
ここまで来て私は心折れました。
肉からでは十分なオメガ3は摂れなさそうです。ましてやDHA/EPAなんて無理過ぎ。
まとめ
色んな肉や部位を見ていくことで、自然に必要な脂肪酸を摂れるモノが見つかるかと思いきや、現実は甘くないことがわかりました。
EPA/DHAはオメガ3の他の脂肪酸を摂っていれば体内で合成できますが、そのオメガ3自体も少ない量しか摂れない以上、他の対策を考える必要がありそうです。
イメージだけで言うと、「自然なお肉最高!」となりそうなところですが、ちゃんとデータで見ていくとイメージと事実にはギャップがあるということを痛感しますね。
では!